シュトロハイム自身が編集した版は三十数巻という膨大な長さであったが、劇場公開時には約三分の一に短縮されている。
(略筋)
ここはモンテ・カルロ。歓楽の都として有名な地中海に臨むモナコの港町である。ここにロシア王女ペチニコフ姉妹とロシア貴族カラムジン伯爵と称する軍人の三人組がいた。実は、彼らは世間の眼をごまかし、悪事を続けて行く為のカモを狙っていたのである。そこへアメリカから重要な使命を受けて、アンドリュウ・ヒューズ夫妻がやって来た。夫妻のような社会的に高い地位にある人達と交際すれば、世間の人々の信用を得る事になると考えた彼らによって、夫妻はこの地を踏んだ瞬間からつけ狙われる事になったのである。早速夫妻と近づきになる役を買って出たのは、奸智に長けたカラムジンである。彼はまず、ヒューズ夫人に接近した。
世間知らずで、人を疑うことを知らない正直な夫人は、カラムジンをてっきり正真正銘のロシア貴族と信じ込み、次第に彼の計略の術中に落ちて行った。要するに、彼女は愚かな妻だったのである。彼女は今まで想像もしなかったような怖るべき事態に直面した。そして、アモロサの別荘の炎上、憎むべきカラムジンの突然の死、切羽詰ったペチニコフ姉妹の最後―。それらは、アメリカで何不自由なく暮らして来た夫人にとって苦くも得がたい人生教訓となった。
彼女は、偽者の中に探そうとしていた気高さというものを、今なお深く自分を愛してくれる夫の中に見出し、夫の腕に抱かれて、この怖ろしい数々の事件にもかかわらず、今自分が無事であることの感謝を神に捧げるのであった。