主演の國島荘一など主に舞台で活躍した俳優が多く出演しているが、松竹蒲田の準幹部女優・佐々木清野や、松竹蒲田から阪妻プロ、さらに新興キネマへ移って多くの作品に助演した堀川浪之助が脇を固めている。
(略筋)
静かな農村で暮らす河田謙一と弟・順二は、幼くして両親と死別し、叔父夫婦に育てられていたが、叔父の家は貧しく、心ない村人達からも「厄介者のくせに無能者」と嘲笑されると、兄弟は心苦しかった。そして或る夜、これ以上厄介にはなれないと順二は家を出る決心をしたのだが、謙一に見つかり、思い止まった。
ところが、翌朝一通の手紙を残して、謙一が家出したのである。
謙一は或る機械工場で働き、夜は予てから研究中であった農具改良の設計に努めていた。そして遂に完成し、高額で買い取られると、その大金を叔父の元へ送った。だがしかし、疲労が祟り病に倒れた謙一は工場から解雇され、頼る者もなく孤独な身を下宿に横たえていたのである。大金に驚いた故郷では謙一を捜すべく、順二が村を出るが中々見つからない。病が益益悪化して行く謙一。下宿の内儀の親切で、叔父の娘・光子が駆け付け、やっと再会できた。そして数日後、光子の看護で快方に向った謙一が光子と共に“故郷の空”を口ずさんでいると、そこに兄を捜し、疲れ果てた順二が通りかかったのである。