発掘、復元に成功したのは、本来全四巻のところ、後半部分の約三分の一である。
簡易保険局の委嘱により製作された宣伝映画で、当時はこの様な宣伝映画も度々つくられており、現在保存されている作品では、やはり清水宏の監督作品で『岐路に立ちて』(昭和5年松竹蒲田、結城一朗主演)が、郵便年金の宣伝映画である。
後年に製作した子供を主人公とする数々の名作で高く評価される清水宏であるが、本作を撮った二十代の頃には、メロドラマを量産しており、その清新な作風から将来を嘱望されていた。
“悲劇の子役スター”として人気のあった高尾光子が美しい娘役で主役を演じている他、蒲田ナンセンス喜劇で活躍した新井淳、堅実な演技により脇役として重用された水島亮太郎が主要な役で出演している。
(略筋)
十五年前鎮守の森で源作に拾われたお光は、慈愛深い源作夫婦の元で美しく親孝行な娘に育っていた。貧苦の余りお光を捨てた高吉が、或日村に現われた。その後も生活苦に追われ、心も荒み切っていた。お光を見た高吉は娘を食い物にしようと源作の家を訪れ話を進めたが、源作のお光に対する愛情を目の当たりにすると、流石に悔悟の念にかられ、深く己の罪を謝して村を去って行った。一年程たって源作は、娘の幸福の為に二度と会うまい、親子を名乗るまいと決心し乍らも、病に伏し死ぬ前に一目娘に会いたいと願う高吉の手紙を受け取った。源作夫婦は悩んだ揚句、お光を会わせる事にした。唯一人の娘の為に死力を尽して働き貯めた簡易保険の通帳を残し、“お父さん”と初めて聞く娘の言葉に、満足な微笑みをもらして高吉は死んで行くのだった。