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伊豆の踊子
昭和八年松竹キネマ蒲田作品
昭和八年度キネマ旬報ベスト・テン第八位
(昭和八年二月二日帝国館封切)
スタッフ
原作: 川端康成
脚色: 伏見 晁
監督: 五所平之助
撮影: 小原譲治
助監督: 富岡敦雄
字幕: 志賀友易
舞台装置: 金須 孝
照明: 水上周明
衣裳着付: 三田村たみ
結髪: 篠崎うめか
キャスト
踊子・薫・・・田中絹代
学生・水原・・・大日方傳
踊子の兄・栄吉・・・小林十九二
栄吉の妻・千代子・・・若水絹子
踊子の母・おたつ・・・高松栄子
雇い女・百合子・・・兵藤 静江
湯川楼の主人善兵衛・・・新井 淳
その息子・隆一・・・竹内良一
鉱山技師・久保田・・・河村黎吉
村の巡査・田村・・・水島亮太郎
虚無僧・・・武田春郎
遊客・服部・・・坂本 武
芸妓・・・飯田蝶子
仝・・・花岡菊子
温泉宿の客・・・阿部正三郎
湯川楼の爺・喜作・・・青野 清
床屋の亭主・・・曽我 修
道路工夫・・・長尾 寛
仝・・・松本十九
村の巡査・・・桂木志郎
仝・・・吉田 光
薬売りの男・・・谷 麗光
村の男・・・仲英之助
仝・・・柳田礼司
船員・・・高山義郎
宿の女中・・・京谷千恵子
仝・・・明山静江
波止場の女・・・小泉泰子
(解説)
川端康成の同名小説の最初の映画化。当時の日本映画界では、本作品のような是といった山場のない、淡々としたストーリーの純文学作品は、興行的価値が稀薄だとして映画化が敬遠されていたが、五所平之助監督の強い希望により実現した。伏見晁の脚本により金鉱発掘など原作にはない話が加えられ、五所監督の抒情あふれる演出と、「出来すこぶるよろしい」と当時の批評でも絶賛された田中絹代の純情可憐な演技が相乗して、無声映画晩期を代表する名作となった。本作品の成功により、日本映画の芸術的水準は画期的に高められ、文芸作品の映画化を推進する起爆剤ともなったといわれる。
伊豆や信州・安曇野などでロケーションされた豊富な情景は、戦後の再映画化作品ではとても表現出来ない昭和初期の風情を醸し出し、見所の一つとなっている。
(略筋)
休暇を利用して伊豆を旅していた学生水原は、ふとした機縁で旅芸人の一行と知り合い、道連れとなった。水原は次第に純情な踊子薫に心惹かれ、薫もまた淡い恋心をいだくのだった。薫の兄の栄吉は道楽者で、親の代に持っていた金鉱も手放し苦労してきたが芸が身を助けたのだと水原に語った。ある温泉町に着くと、手放した金鉱から金が採れて、温泉宿湯川楼が繁盛していることを知り栄吉は激怒した。そして鉱山技師の久保田に唆されて、湯川楼に掛け合いに行くが、主人善兵衛に、金が入用なら薫を連れてこいと云われ愕然とする。事情を聞いた水原は、義憤を感じ翌日善兵衛に会いに行くが、そこで意外な善兵衛の本心を知り感激して帰るのだった。何か云い知れぬ淋しさを胸に、水原は薫たちと別れて行く決心をしたのであった。
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