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伊豆の踊子

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(解説)
川端康成の同名小説の最初の映画化。当時の日本映画界では、本作品のような是といった山場のない、淡々としたストーリーの純文学作品は、興行的価値が稀薄だとして映画化が敬遠されていたが、五所平之助監督の強い希望により実現した。伏見晁の脚本により金鉱発掘など原作にはない話が加えられ、五所監督の抒情あふれる演出と、「出来すこぶるよろしい」と当時の批評でも絶賛された田中絹代の純情可憐な演技が相乗して、無声映画晩期を代表する名作となった。本作品の成功により、日本映画の芸術的水準は画期的に高められ、文芸作品の映画化を推進する起爆剤ともなったといわれる。

伊豆や信州・安曇野などでロケーションされた豊富な情景は、戦後の再映画化作品ではとても表現出来ない昭和初期の風情を醸し出し、見所の一つとなっている。

(略筋)
休暇を利用して伊豆を旅していた学生水原は、ふとした機縁で旅芸人の一行と知り合い、道連れとなった。水原は次第に純情な踊子薫に心惹かれ、薫もまた淡い恋心をいだくのだった。薫の兄の栄吉は道楽者で、親の代に持っていた金鉱も手放し苦労してきたが芸が身を助けたのだと水原に語った。ある温泉町に着くと、手放した金鉱から金が採れて、温泉宿湯川楼が繁盛していることを知り栄吉は激怒した。そして鉱山技師の久保田に唆されて、湯川楼に掛け合いに行くが、主人善兵衛に、金が入用なら薫を連れてこいと云われ愕然とする。事情を聞いた水原は、義憤を感じ翌日善兵衛に会いに行くが、そこで意外な善兵衛の本心を知り感激して帰るのだった。何か云い知れぬ淋しさを胸に、水原は薫たちと別れて行く決心をしたのであった。


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