MATSUDA: Nen-Pyo (Japanese)
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戦国時代

大正十三年東亜マキノ等持院作品
(大正十三年十二月一日京都マキノキネマ封切)

原作・・・・篠崎三千秋
脚色・・・・陸大蔵(後の悪麗之助)
監督・・・・沼田紅緑
撮影・・・・田中十三

〈配役〉
結城持朝・・・・市川花紅
息女・千代姫・・・・マキノ輝子
侍女・桔梗・・・・泉春子
矢嶋龍之助・・・・高木新平
望月大助・・・・月形龍之介
股野弾正・・・・岩城秀哉
難波太郎・・・・坪井哲
望月妹・女騎士・・・・山路よし子
茶坊主珍斉・・・・市川省紅(後の阪東太郎)
沢能登守・・・・美浪光(後の尾上紋弥)
其の臣 左守左内・・・・大岩栄次郎
百姓・作松・・・・高松錦之助

〈略筋〉
戦国の世、激しい争闘が続くうちに、関東の国司結城持朝は隣国を征服し、その戦勝の祝宴を催した。久方振りに平和の夢に酔いしれていると、突如、猛将股野弾正が大軍を以って攻め寄せた。衆寡敵せず、結城城は哀れにも股野の手に奪われ、持朝は憤死した。
捕われの身となった持朝の息女千代姫は、股野の意に叛いて恐ろしい土牢に幽閉されてしまった。ところが、何処からともなく覆面の怪人が現われ、千代姫を救ったのである。その後怪人は千代姫が危機に陥ると必ず救い出し、何処へともなく立去るのだった。
或る夜、厳しい警戒をぬって股野の寝所に怪人が現われた。股野は一太刀浴びせられるが、股野方へ寝返った矢嶋龍之助が怪人を捕まえた。怪人の覆面を取ると、その正体は驚いたことに、臆病者の茶坊主珍斉だった。一同呆然とする内に、哀れ珍斉は股野の手にかかって最後を遂げるのである。千代姫は望月大助に擁せられ股野の虚に乗じて乗り込んだが、目的を果たすことは出来ず、野武士に捕えられ、山寒に幽閉されてしまった。これを救ったのが行方不明だった侍女の桔梗である。桔梗の勧めで千代姫は許婚の沢能登守の居城・霞ヶ城に逃れた。
早くもそれを知った股野は、大軍を以って霞ヶ城を包囲した。能登守も奮戦したが、食糧を断たれ悲惨な籠城を強いられた。桔梗は主人をこの危機から救わんと男装して、股野に和解を求めて乗り込んで行く。だが見破られ桔梗は殺されてしまうのだった。
霞ヶ城中にまた奇怪なる覆面の武士が現われた。敵か味方か判らない。股野は一気に落さんとしたが、却って謀られ、遂に落命した。 さて、覆面の正体は?・・・・・ H

〈解説〉
『斬奸』に次ぐ沼田紅緑の監督作品であり、帝キネに移った悪麗之助が陸大蔵の名でシナリオを書いている。全三篇からなる連続時代活劇であり、東京ではお正月映画として大ヒットした。
高木新平は、この年の一月に出世作となった『快傑鷹』が封切られて人気が高騰し、私生活では同じマキノの女優・生野初子と結婚と、公私共に充実し絶頂期を迎えていた。本作品は、一部欠落部分があるものの、唯一保存されている高木新平主演作であり、画面には《鳥人》と呼ばれるに相応しい躍動感溢れる演技が随所に漲っている。当時の批評にも「俳優は競って大芝居を見せて居る。高木、月形、岩城の諸氏も気持好さそうに大見得を切って居る」とある。


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