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1980年マツダ映画社作品  日本映画ペンクラブ選出
1988年度第五位(ノンシアトリカルの部)

阪妻−阪東妻三郎の生涯

 

 
製作・演出 松田 春翠
構成・インタビュー 佐藤 忠男
撮影 高坂  広
池  雅行
坂本猪一郎
編集 江原 義夫
音楽 アンサンブル想い出
選曲 窓野 雪夫
フィルム提供 松 竹 株式会社
  大映映画株式会社
  にっかつ株式会社
  マツダフイルムライブラリー
資料協力 足立 巻一
  太田 俊穂
  吉田智恵男
  無声映画鑑賞会
  フィルムライブラリー協議会

【出演】
田村 高廣
伊藤 大輔
森  静子
稲垣  浩
環  歌子
久世  竜

【ナレーター】
松田 春翠
澤登  翠

 


解説 1923年9月1日関東大震災発生。この大破壊を区切りに、日本の文化は新旧の交代を迎えることになった。そして、チャンバラ小説の流行をはじめとする大衆文化の時代が始まった。映画も旧劇と呼ばれた尾上松之助の時代から、新しい時代劇を代表する阪東妻三郎の時代へと転換して行く。  

阪東妻三郎、本名・田村傳吉。1901(明治34)年12月13日生れ。彼が通った日本橋の十思小学校は、奇しくも、彼がよく演じた勤王の志士達とゆかりの深い小伝馬町牢跡の隣にあった。  

小学校を出た彼は、片岡仁左衛門に弟子入りし俳優生活を始めるが、まもなく浅草の小芝居に移り、自分で一座を起すが失敗し、京都のマキノ等持院撮影所に入る。そして、華々しく売り出す。当時の少年少女ファンがどんなに血を沸かせたことか、若き日の阪妻作品、詩人足立巻一、元岩手放送社長太田俊穂の証言を紹介。

25年、阪妻は独立プロダクションを起す。そこでの作品をじっくり見ながら、当時共演した女優森静子、環歌子の知るT人間阪妻Uが語られてゆく。また、阪妻によって立ち廻りがどう進歩していったか、かつて阪妻のスタンド・インも務めた名殺陣師久世竜が、実技入りで解説する。  

31年、阪妻は千葉県谷津に撮影所をつくって製作を続けるが、これは苦年時代だった。そして37年、阪妻は日活へ移って行く。  

翌年の日活オールスター大作『忠臣蔵』の片岡千恵蔵共演〔東下りの場〕をたっぷり挿入。続く稲垣浩監督作品から、阪妻がいかにして円熟した芸風をつくり上げていったかが語られ、渋い味わいに転じた阪妻を『無法松の一生』の名場面 で見せる。戦後、阪妻は『王将』でひとつの頂点を極める。その演技の真髄を伊藤大輔監督が語る。  

晩年の阪妻の私生活が納められた、長男高廣撮影による貴重なホーム・ムービーがある。家庭人としての阪妻が語られると、遺作となった『あばれ獅子』の勝小吉の役柄は最も素顔に近い人物だったという。  

53年7月7日、『あばれ獅子』の撮影中に阪妻は脳出血で死んだ。京都二尊院の美しい墓に今も阪妻は眠っている。  

この映画は、阪妻の伝記であると共に名場面集であり、また大正末期から戦後に至る日本映画発達史の一側面 とも言えよう。阪妻の足跡を追っていくと、それは日本の映画界が歩んだ成長の軌跡と重なることがわかる。そして、阪妻の苦悩は、そのまま、あの忌わしい戦争へと突入していった日本の苦悩でもあったのだ。偉大なるスターを知ることにより、あたかもその国の歴史や価値観までもが見えてくるようだ。

【挿入作品】
『豪傑児雷也』(21年 監督・牧野省三 主演・尾上松之助)
『月形半平太』(25年 監督・衣笠貞之助 主演・澤田正二郎)
『木村長門守』(28年 監督・石山稔 主演・市川百々之助)
『影法師』(25年 監督・二川文太郎 主演・阪東妻三郎)
『小雀峠』(23年 監督・沼田紅緑 主演・市川幡谷)
『逆流』(24年 監督・二川文太郎 主演・阪東妻三郎)
『雄呂血』(25年 監督・二川文太郎 主演・阪東妻三郎)
『乱闘の巷』(26年 監督・安田憲邦 主演・阪東妻三郎)
『坂本龍馬』(28年 監督・枝正義郎 主演・阪東妻三郎)
『新版大岡政談』(28年 監督・伊藤大輔 主演・大河内傳次郎)
『鞍馬天狗』(28年 監督・山口哲平 主演・嵐寛寿郎)
『旗本退屈男』(30年 監督・古海卓二 主演・市川右太衛門)
『侠客春雨傘』(33年 監督・冬島泰三 主演・林長二郎)
『国士無双』(32年 監督・伊丹万作 主演・片岡千恵蔵)
『新納鶴千代』(35年 監督・伊藤大輔 主演・阪東妻三郎)
『忠臣蔵』〔日活版〕(38年 監督・マキノ正博、池田富保 主演・阪東妻三郎)
『無法松の一生』(43年 監督・稲垣浩 主演・阪東妻三郎)
『王将』(48年 監督・伊藤大輔 主演・阪東妻三郎)
『あばれ獅子』(53年 監督・大曽根辰夫 主演・阪東妻三郎)
『地獄の蟲』(79年 監督・山田達雄 主演・田村高廣)

★ベルリン国際映画祭、サン・パウロ国際映画祭、ロンドン国際映画祭、ボンベイ・ドキュメンタリー国際映画祭 正式招待作品


 


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